帰化Q&A
帰化手続きについてよくある質問を以下にご紹介します。
Q1 帰化の条件は何ですか?
A 帰化の条件は『国籍法』という法律で定められており、
その人の身分関係や在日年数等によって、下記3つのパターンに大きく分類されます。
1.普通帰化(国籍法第5条)
2.簡易帰化(国籍法第6条~8条)
3.大帰化(国籍法第9条)
しかし、国籍法で定められた条件はあくまで最低限のものであるため、
この条件を満たせば必ず許可されるわけではありません。
詳しい条件についてはこちらをご参照ください。
Q2 帰化の申請をするにはどのような書類が必要ですか?
A 帰化を申請するためには、住民票や課税証明書はもちろんのこと、
親子関係や結婚について証明する本国の書類や、勤務先作成の資料、
その他、出生から現在までの詳細な履歴書、出入国記録、自宅や勤務先の地図等、
非常に膨大な量の書類が必要になります。
一般的に必要となる書類はこちらでご案内しております。
必要となる書類は申請人の状況によって大きく異なりますので、
帰化をするためには、まずどのような書類が必要か確認することからはじめなければなりません。
なお、ご自身だけで手続きを進める場合、まずは住所を管轄する法務局に相談に行き、
相談員の指導のもと、少しずつ書類をリストアップしていくことになりますが、
1回の相談ですべての書類を案内されるわけではないため、
通常は必要書類の確認だけでも2~3回は法務局に足を運ぶ必要があります。
一方、当社にご依頼いただく場合は、
ご依頼いただいた段階で全ての必要書類をカスタマイズしてご案内できますので、
法務局での事前相談は原則として必要ありません。
そのため、格段に早く準備をスタートすることができます。
Q3 帰化は申請が受付されれば、ほぼ100%許可されると聞きましたが本当ですか?
A たしかに、かつて一部ではそのような情報が流れていたようですが、
結論としては、実質的な許可率は決してそのように高いわけではありません。
帰化の申請者数や許可・不許可人数は、法務省民事局が毎年公表しています。
ご参考までに、過去10年(平成18年~平成27年)の統計を以下に引用します。
上記表のうち、たとえば平成21年に着目すると、申請者は「14878人」、
許可者は「14785人」となっているため、単純に計算すると許可率は99%以上となります。
また、平成24年の場合は申請者が「9,940人」、許可者はそれを上回る「10,622人」となっているため、
あたかも許可率が100%超というような数値となっています。
しかし、申請から結果までの期間が約1年であることを考えると、そのように単純に許可率を計算することはできません。
一方、仮に申請の翌年に結果が出たとして計算してみても、
申請者数から許可者数を引いたとき人数と、不許可者数として発表されている人数に差があることに気が付きます。
たとえば、平成24年の申請者数「9,940人」から平成25年の許可者数「8,646人」を引いた人数は「1,294人」なのですが、
公表されている不許可者数は「332人」しかいません。
この差は、申請を「取り下げ」た人が関係していると考えられます。「取り下げ」については次のQ4をご参照ください。
そのため、(もちろん年によって異なりますが)実質的な許可率は80%前後、
つまり「5人に1人は不許可」といったところかと考えられます。
さらにここ数年、審査期間の長期化と同時に、上記表からもおわかりいただけますとおり、不許可者数も増加傾向にあります。
したがって、帰化許可申請は、全体としてこれまで以上に難しい手続きになっているといえるでしょう。
Q4 帰化審査の結果は、「許可」・「不許可」の2パターンだけですか?
A 帰化許可申請という申請に対する行政処分としては、「許可」「不許可」の2パターンです。
しかし、上記Q3でも取り上げたとおり、審査実務上は、上記2パターンとは別に「取り下げ」というパターンもあります。
「取り下げ」とは、いったんは申請が受け付けられたものの、法務局での審査段階で許可の見込みが極めて低いと判断された場合、
本省(法務省)に上げる前に「今回は申請をあきらめたほうがいい」との旨を法務局が申請者に対して助言し、
その助言に従い申請者がその申請自体を途中で取り止めることをいいます。いわば、「キャンセル」するということです。
※ただし、許可見込みが低い事案のすべてに対して取り下げの助言がなされるわけではありません。
近年、この「取り下げ」事例も増えてきている印象を受けます。
法務局の助言に従い、申請を取下げた場合は、不許可処分にはならないため、申請経歴上は白紙の状態に戻ります。
しかし、通常、取り下げの原因になりうる理由を解消するためには数年単位での時間が必要となりますので、
取り下げ後、もう一度申請するためには、早くで2~3年、長い場合は10年ほど時間をおく場合もあります。
前記Q3の表に記載されている「不許可者数」は、取り下げの助言い従わず申請続行を試みた人数、
もしくは申請後に発生した新たな事情により不許可となった人数が反映されているものと思われます。
Q5 一度帰化が不許可になると、もう二度と申請することはできないのですか?
A 状況が改善され、帰化の条件を満たす状態になれば、再び申請することができます。
帰化が不許可となった場合は、法務省から管轄の法務局へその旨が通知され、
その通知を受けた法務局長から、帰化申請者に対し不許可の通知書が送られます。
※写真は実際の不許可通知書の一部です。
帰化の不許可処分は、行政法上の「行政処分」とされているため、
裁判所等の判決と違って一時不再理とはなりません。
※「一時不再理」とは:ある事件について有罪無罪の判決等が一度確定した場合は、
同じ事件について再び公訴を提起することを許さないという刑事訴訟法上の原則。
そのため、不許可となった理由(原因)が解消され、再び帰化要件が満たされた場合には、
再申請が可能とされていますし、実務運用上もそのように取り扱われています。
ただし、一度不許可という記録が残ってしまうと、再申請によって帰化が許可されるためには、
かなり長い時間をおかなければならないケースがほとんどです。
もちろん、不許可理由によっておくべき期間は異なりますが、
多くの場合、5~6年から10年前後の期間をそのリカバリー(解消)に要しているようです。
Q6 帰化審査において犯罪歴(法令違反経歴)はどのくらい影響しますか?
A 犯罪(法令違反)の度合いにもよりますが、程度によってはそれを理由に不許可、
もしくは時間をおいてから申請するよう助言される可能性があります。
帰化の条件にひとつに「素行条件」(国籍法第5条1項3号)があります。
素行とは、日常のおこないを意味しますので、普段の生活において、
法令やルールをしっかり守っているかという点がチェックされます。
帰化を許可するということは、当該外国人を日本国の構成員として迎え入れるとうことなので、
帰化によって日本の社会秩序が乱され、社会の安全が害されることがあってはなりません。
そのため、素行条件が規定されているのですが、
素行が善良であるかどうかの具体的な基準については、国籍法上、定められていません。
上記基準について、審査実務上は、わが国の社会における通常人の素行と比較して判断しています。
たとえば、交通違反(軽微なもの含む)が直近5年間で3回以上続いている場合や、
税金、健康保険、年金等の公的義務を、中長期間にわたって履行していない場合等は、
審査に与える影響が相当程度大きいと考えるべきです。
また、交通違反のなかでも刑事処分として罰金の対象となった場合、その他刑法上の罪に問われた場合等は、
その記録が少なくとも5年以内に残らなくなるまで、時間をおくよう指導されることもあります。
申請者自身では"ささいな”ことだと認識していたとしても、審査機関は問題視することも珍しくないため、
安易な自己判断に頼ることなく、専門家の見解を踏まえて慎重に対処すべきだといえるでしょう。
Q7 帰化の申請は、必ず家族そろって行う必要がありますか?夫婦どちら一方だけではダメですか?
A 実務上、家族のうちで申請しない方がいても申請は受け付けられています。
しかし、帰化制度の趣旨から考えると、家族そろって申請することが望ましいといえます。
近年、上記質問のように、家族のうち1人(たとえば夫のみ、妻のみ)だけが申請するケースが多くなっています。
かつて管轄法務局によっては、家族そろっての申請でなければ受け付けないという取扱いもあったようですが、
近年では個人の意思の尊重という観点からか、家族のうち一部の申請であっても、実務上は通常どおり受け付けられています。
しかし、そもそも「帰化」とは、日本国籍を取得し、日本国の正式な構成員になることを意味します。
帰化の最も基本的な条件として、「居住条件」(国籍法第5条1項1号)が定められているのですが、
同条で「引き続き5年以上日本に住所を有すること」とされているのは、
「日本に一定期間生活の本拠を有し、日本社会に馴染み、実質的に同化していることが必要※」だからです。
※『逐条註解 国籍法』木棚 照一著 P.259
このような帰化制度の趣旨や条文上の要請を考慮すると、
結果として家族(同一世帯)のなかで帰化をしない方がいるとなると、
上記「生活の本拠」や「同化」という点において客観的な不安要素が生じるため、
実体審査がより慎重化し、状況によっては可否判断において消極的に斟酌される可能性も出てくることが予想されます。
したがって、当社では極力家族(世帯)単位での帰化を検討されるようアドバイスしております。
※もちろん、家族(世帯)単位での申請を強要するものではありません。